あ、あぁ、コッチかな…

久しぶりにリカの声を聞いた。
というか、
必要に駆られたとは言え、
リカに話しかけられたという
事実だけで、高揚した。

目を逸らすその横顔、
シャープな顎のラインと、
ふくよかな耳たぶ。

長い睫毛。

不貞腐れてるのに、
震えるほど可愛い。


今しか、

もう今しかない。


あ、リカっ、

あの、俺、やっぱりリカの事が…

そこまで言いかけて、

リカはキッ、
とコッチに振り向き様、

『いい加減にしてよっ!
もう誰とも付き合う気なんかないのっ!』

そういって、
プラスティック製のチリトリは
リカにコンクリートの床に
叩き付けられ、

高く跳ねて、転がった。

コレが後に語られる、
チリトリバウンド事件である。