この三年坊主二人組っ!


 さては、また二宮を狙って来たんだな!

 しつこいなぁ! よっぽど二宮を気に入ったに違いない!

 そう思うと……なんだか無性に腹が立つぜ!

 今度はボールを、その坊主頭に投げつけてやる! ……って、残念ながら、今は持ってないんだっだ。


 三年坊主二人組が「へっへっへ~」と、悪そうな笑み浮かべながら近づいてくる。


 俺は、不安そうにする二宮を背後に回した。


 二宮には……指一本触れさせないぞっ!


「……先輩方。また二宮を狙って来たんすか?」

「ちげーよ。お前に用があんだよ、一年坊主」


 俺はつかさず『坊主はあんたらじゃん』と、心の中のツッコんだ。


 ……って、へ? ていうか、二宮をまた絡みに来たんじゃなくて……


「俺に用すか?」

「……そうだよ」



 だとしたら……昨日の『壁ドコッ!!』の仕返しか。

 それはさすがにマズいぞ。この二人やたら図体がデカいし、俺……ボコボコにされるかもな。

 せめて、二宮だけは逃がさないと。


 そうこうしているうちに、三年坊主二人組にじわじわと追い詰められる。

 俺はいよいよ、二宮に『逃げろ!』と言おうとした。


 が、しかし……


「…………へっ!?」


 三年坊主二人組が、俺の前で正座をし、バンッと手を前についた。

 予想外の行動に……一瞬ポカンとした。

 他の生徒達も、その光景を不思議そうに野次馬しつつ通りすぎていく。


「……は、はぁー!? な、何やってんすかぁ!?」

「昨日は……すまなかった!!」

「……はい?」

「君の大事な『彼女』に手を出してしまって……深く反省してるっ!!」

「え……えぇ~?」


 悪そうな態度が一転……三年生坊主二人組は、深々と土下座をして謝ってきた。

 ていうか、二宮は『彼女』じゃないんすけど……まぁいいや。今はそれは置いといてっと。


「まぁ……反省してるなら、もういいんすけど……二宮から聞いたら、何もされなかったって言うし……な? 二宮」

「え? う、うん……」

「ありがとう! それで……君に頼みがあるんだ!」

「は? 頼み?」


『一年坊主』から『君』に昇格したし。逆に気持ち悪い。頼みって何だよ。


「お願いだ! ぜひっ……我が野球部に入ってくれー!!」

「……は……はぁーーーー!?」


 なっ、何だそれは!?


「あの、壁にめり込む程の豪速球……君は彗星(すいせい)のごとく現れた救世主だ!!
 もし、君が入部してくれたら間違いなく甲子園に行ける!!」

「君が彼女を救ったみたいに、この超最弱小野球部も救ってほしいんだ!!
 頼むっ!! このとおりだぁっ!!」


 と、更に深々と頭を下げてくる。


 まさかの……野球部にスカウト。

 どおりで、二人とも坊主なわけだ。


 これには俺も、後ろにいる二宮も、ア然とした……。