*


 次の日の朝。


「んー! 今日もよく晴れてんなぁ~!」


 俺は、改札から出るなり、太陽の光を浴びながら伸びをした。


 駅から学校まで徒歩10分ぐらい。


 おんなじ制服を着た生徒達は、それぞれで楽しそうに歩いたり、慌てて走ったりしている。


 晴れた朝の風景って、爽やかでいいよなぁ。『今日も一日始まるぞ~』って感じだし。俺好きだぁ。


 浮かれ気分で学校に向かって歩いていくと、前に一人、ゆっくりと歩いている女子が目についた。


 お? あの後ろ姿はもしかして……


 軽く駆け寄って、確認してみた。


「……あ、二宮。おはよ!」

「あっ、お、おはよっ……」


 やっぱり二宮だった。

 アハハ! 誰かに声をかけられるって思わなかったんだろうな~。こんなに目を見開いて驚いちゃってさ!


『一緒に行こう』とか言ったわけじゃないけど、俺は何となく二宮と一緒に歩き出した。


 二宮は、少し俯(うつむ)きながら歩いている。


(二宮……かぁ……)


 背は、俺の肩ぐらいか……たぶん、160もなさそう。肩までのセミロングにパッツン前髪。小さな子供みたいに純粋無垢(じゅんすいむく)な顔してる……


「あ、中島君……。昨日は、本当にありがとう…………あの……中島君?」


 二宮に呼びかけられて、やっとハッと気づいた。

 いけねっ。つい、二宮を見過ぎてしまっていた。

 何となく、恥ずかしい気持ちになった。


「あっ……あぁ、いいって! 偶然通りかかっただけだし。
 俺の方こそ、ありがとうな。あのあと二宮が一緒だったから、おかげであれ以上迷わずに済んだよ! アハ、ハハハ!」


 あ~焦った。変な汗かいちまった。


「中島君って実は、方向オンチだったり……するの?」

「……え?」


 二宮が、当たってることを遠慮がちに訊いてきた。


「あ……ごめんね? 失礼だよねっ……」


 慌てて謝る二宮に対して、俺は……


「……あ~失礼っ! 超失礼~っ!」


 と、冗談混じりで言ってみた。


 そういや二宮って、冗談……通じるかな?


 反応を待ってみたら、



「……ぷっ! アハハ、だよね。ごめんね」



 あ、通じた。

 通じたし……笑ったとこ、初めてみた。

 二宮は、笑い方まで控えめだった。

 そんな顔がもっと見たくなり、更に話を続けた。


「俺さ、昔っからそうなんだよ~。親にも友達にもよく言われるんだ。『お前は知らない場所では、絶対に一人で行動するんじゃねぇぞ』って」

「そんなに?」

「そんなに」

「それ、よっぽどなんだね。アハハッ……」


 ……また笑った。

 笑う二宮って、珍しく感じる。自信なさげに俯いているところしか、まだ見てなかったから……。


 ……ふぅん。

 こうして見ると、なんか……



「二宮って……」

「え?」

「……っ、いやっ。なんでもないっ」

「……そう?」



 二宮って……


 かわいいんだな。