俺たちは教室へ向かう。

周りの女子の声に返すのに、いつもはうんざりするけど、今はぜんぜん、そんなことは思わない。


「夏」

「…なんだよ」


こっそり、話しかけてくる麗。


「……伊紅だったら。本当に伊紅だったら、………………どうしよ」 


顔がほころぶのを隠せないのか、ずっと手で口を覆っている麗。




「……っ…!知らねーよ。………………………俺だって聞きてーよ」




あれから、俺たちがどんなに努力したのか。


どんなに会いたかったか。




聞いてほしい。

全部。




きっと、伊紅は笑うんだ。




会いたかった、って言いながら。