「……大丈夫か?伊紅」 ぎゅっ………と抱きしめる夏葉。 「………ありがとう」 でも、こんなんで済むわけがない。 「…………伊紅ぅぅぅ」 低い低い声が、響く。 「………こわ」 麗が呟く。 でも、本当に怖い。 今の先輩の目は、本当に怖い。 「なんでその男?なんで俺じゃないの? 俺のためにずっといじめに耐えててくれたんでしょ? その耳、俺を守ってくれたからなんでしょ? 俺への愛でしょ?」 次々とまくし立てられる言葉。 そんなのじゃない。 そこまでの気持ちは、なかった。