「後ろに、夏葉が来るとこだったから」 そう言うと、伊紅の耳が、赤くなる。 知ってるんだ。 伊紅は嘘をつくとき、手を後ろで組む。 恥ずかしい時は、耳が赤くなる。 昨日の8時ごろ、夏葉は口を手でひたすら隠しながら、帰ってきた。 『伊紅はいた?』 と聞くと、そっぽを向きながら、 『ああ』 と短く答え、また口を手で覆った。 絶対、伊紅に何かした。