図書室は夜の海のように静かだった。
本棚に並ぶタイトルを眺めながら、何がいいのかな?と思うけど、二嶋くんがよくわからないからな。
二嶋くんは司書の宮崎先生に呼ばれて、その場を離れてしまい今それを確認することもできないでいた。
ふと横を見ると、ヨウが一冊の本を手に取っていた。
本が浮いてると思って、慌ててそれを掴む。
「なんだよ」
「なんだよじゃないわよ。本が浮いてるでしょ?」
手にあるのは、かめちゃんが持っていた絵本の童話集だった。
もしかして、あの人魚姫の絵が気になって手に取ったのかなと察した。
「気になるの?」
「ああ。この本何か気になるんだよな。引っかかる。どんな話だったっけ?」
「家にこれと同じ本あるよ」と伝えると、「そうか」と素直に本を戻した。
そのとき「ひな子ちゃん、ごめんね」と二嶋くんが戻ってきたから、焦ったけど今の会話は、聞かれてはいなかったみたいだ。
「あっ……ううん」
「なんかいいのありそう?」
「それなんだけど……どういうのが好きなのかわからなくて。二嶋くん図書室で何か借りたことってあったりする?」
小声で訊いた。
「えー。ないかなぁ……あっ、あれは借りたかも。小学校のとき」
訊くと、無免許の天才外科医を描いた漫画だった。