「日菜子~朝だよおきな?」

おにいちゃんの部屋であまりいいとは言えない目覚め。

「きのう寝るの遅かったからまだ眠いかも
しれないけど。」

誰のせいだと思ってんのよ!!
心のなかで思いながら、

「今起きる」

とだけ答えた。

眠いのはお兄ちゃんがきのうの夜から朝方にかけて試作品を次から次に試していったからである。

わたしの兄、昴(スバル)はいわゆる
“大人のおもちゃ”を作るメーカーに勤めている。

これだけ聞くと兄が変態に勘違いされるのでつけ足しておくが、兄はけーっして変態な気持ちがあって就職したわけではない。

2年前、両親が交通事故でなくなった。
当時、わたしが中学2年生、兄が高校3年生だった。

仕方なく兄は大学へ進学するのを諦めて、就職することになった。

だが、高卒で早々仕事が見つかるわけでもなく、唯一受かった会社がそこだった。

兄は会社が見つかり喜んでいたが、わたしは複雑だった。

最所こそ兄のことを避けてはいたが、兄はいたって普通に仕事をしていることがわかり、以前と同じように接することが出来るようになった。