薄暗い館内を歩いていると、クマノミなどの可愛らしい魚が泳ぐ水槽が目に入って、くい、と手を引いた。
私が引っ張る方へ、俊くんは何も言わずに着いてくる。
複数の筒型の水槽が並んでいて、小さくてカラフルな魚たちが宝箱みたいなアクアリウムの中を泳いでいた。
私が無言でそれを見始めると、俊くんはちらりと私の方を見て、そのあと水槽に視線を移した。
「……さっき、佳菜が泣きながら笑って俺に手を差し出してくれたとき、ああこれか、って思ったよ。好きってたぶん、こういう感情だって」
俊くんの丁寧な言葉が、じんわりと私の胸に染み込む。
なんだかまた泣きそうだ。心なしか、目の前のアクアリウムの細かな光がぼやけて見える。
「……ねえ。俊くんは私といないとき、私のこと考えたりする?」
俊くんが一度、私の方を見たのがわかった。