とりあえず行く当てもなく出たので


ぶらぶら歩く



伊東が、少しはしゃぎながら

小物屋で、櫛を買った



それを冷ややかに遠目から見る


「はい!貴方に似合うと思って!」



これは、伊東なりの求婚であり

別れを悲しいものにしたくない

という意思表示だった



「俺の……?」


「そうよ!
まぁ…使うことはないでしょうけど?
持ってて欲しいの!」


「ありがとう!」



意味を理解して、櫛を受け取り

伊東に笑みを向けた




幾度となく、出掛けた町が

今日は、違って見えた




「不思議ね…
なんだか、知らないはずの人が
とても、愛おしく見えるわ」


「ぷっ 俺も同じこと想ってた!」



「ねぇ!縁!!甘いの好きでしょう?」

「あんまり、食欲ないけど… いこ!」




2人で甘味屋に入ると




いつかのように


土方と永倉にバッタリ





そして、相席になる





「ぷぷぷっ」


「こら!縁!!笑いすぎよ!!」


「だってさ この2人で甘味だぞ ククッ」


「んな事言ったら、お前らだって!!」


「はははっ そうだな!
俺は、ともかく、伊東さんは
女みたいだもんな はははっ」


団子が来るまで、ケラケラと笑う縁

時々、土方が抗議するが

笑い続けた



「そういえば…
永倉さん祝言は?」


「ん?…まだ
お前こそ、先生と上手くいってんのか?」


「へ?」


「上手くいってるみたいよ!」


「あ!先生ね!うんうん!」



森本が嘘をついてくれたのだと

察して、伊東が先に答えた



今夜、新選組に暗殺されなければならない

伊東が、縁と恋仲だとは、悟られては

ならなかった