「じゃあ」と僕は続けた。
「君は……アキドリ?」
彼女は何も言わなかった。
違いますよ。とは言わなかったけれど、その沈黙は僕にこの質問は間違っていたのかなと思わせるのに十分な効果があった。
僕はそっと彼女の横顔に目をやった。
彼女はまるで僕の質問など聞こえなかったかのように、腕のすそをまき直して、ほつれた髪を耳にかけた。
確証はなかった。
でも、
彼女はたぶん、アキドリだ。
そんな気がした。
正確には、僕に腕時計をくれた、アキドリというニックネームの少女をそのまま大人にしたような姿をしていた。
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