中崎町アンサンブル

鏡に映る僕は、髪の毛をこざっぱりと刈られたどこにでもいる青年だった。

理髪店の女性は手際よく髪の毛を払い落とすと、「何か飲みます?」と言って店の隅に置いてあった冷蔵庫の扉を開いた。

「あの……」と僕は顔を上げた。

一瞬、鏡越しに彼女と目が合った。どうしても彼女に聞きたいことがあった。


「彼女は今、幸せですか?」

と僕は尋ねた。


五秒ほどしてから、「ええとても」と彼女は微笑んだ。

それから一言、

「あなたに会えて良かった」

そう言って、白い、小さな冷蔵庫の扉を閉じた。