中崎町アンサンブル

それからの彼女は静かだった。

ほとんど僕が喋っていた。

まるで彼女の考える時間を与えないかのように、頭に思いついた話を片っ端にしゃべり続けた。

消しカス消しゴムの作り方とか、オタマジャクシの捕まえ方とか、ガンダムの合体の仕方とか、体温計の温度の上げ方とか、学校の話や友達の話、担任の先生の嫌いな食べ物の話とか、何でも話した。

彼女はだいたい黙っていた。

だけど時々笑ってくれた。


アキドリって言う名前もその時僕が勝手につけた。


「変な名前」
とは彼女は言わなかった。

やっぱりただ一言、

「ありがとう」と言って、アキドリはまた笑ってくれた。