“あっ…職員室に行かないと…確か…南部さんのレポートを今日中に山下先生に届けないといけないんだった”

頼まれると断れない性格の勇は良い言い方では『優しい』悪い言い方では『半パシリ』…しかし、彼はそれで損をしているなど感じた事は一度も無い、自分が出来る事で助けになるなら喜んで引き受ける。

職員室でレポートを先生へ渡す。
「ありがとうね。そういえば石田くん…久賀さんと同じクラスだよね?このプリント渡してもらえるかな?」
言われるがままにプリントを受け取り教室へ戻る勇だが…教室へ戻る廊下を歩きながら考える。

“久賀さんにかぁ…ちょっと話掛けにくいんだよなぁ…”

同級生の久賀 景子は一年生の時も勇は同じクラスだった。入学式初日では眼鏡をかけた黒髪の三つ編みで地味な印象を受けた。だが一週間も経たない間に彼女は変わった…眼鏡も掛けていないし、本人の主張では地毛らしいが金髪のストレート、それに話掛けにくい一番の理由は目つきが威圧的で少し恐い…

教室に戻り、窓際の席で机に伸ばした右腕の肩を枕に座っている久賀へ勇は声を掛ける。
「あの…久賀さん」
しかし、返事が無い…イヤホンで音楽を聴いているので勇の声が届いていないのか…