でもさー、と悠紀が続けた。
「一つだけ不思議なのは、なんでよーちゃんのこと知ってたのかな?」
祐がパソコンから顔を上げて悠紀を見る。
「適当に言っていただけ...とかない?」
うーん...と奏がうなる。
「そんなふうには見えへんかったけどなぁー」
「でも、よーちゃんのこと、
よーちゃんって呼んでたのって僕だけなんだよ?」
葵がけだるげに口を開く。
「...正体不明、謎の女。
どっちにしろ関わっていい方に進むとは思えねぇ...」
「正体不明...ってそんな言い方...」
「でも葵の言うとおりかも。
いい方に進むかどうかはまだ分からないけど、
俺らまだあの子の名前知らないし。
だって知ってるのって奏だけだよね?」
祐がパソコン片手に呟く。
「せやなー、ま、それは葵たちがサボってたんが悪いんや!
せんせーから美人の転校生が来るっちゅーのはきいてたのに
教室にいれば自己紹介聞けたのになぁー...」
ドヤ顔で笑う奏に、悠紀が頬を引っ張る。
「て、いうことは...僕らと同じA組なの!
やったぁ~!!」
「へや!ふぁへふぉ...っへふぃふは、はふぁふぁんふぁい! 」
「何言ってるかわかんな~い」
「ふぁふぁふぇ!」
「やぁーだねぇー!あ、やめふぇ!ふぁひふふふぉふぁ!ふぁはへふぁへへー!」
互いの頬をつねり合う2人。
びよーんと伸びている頬は、大夫赤くて痛々しい。
それでも、2人に笑顔が絶えないのは
おたがいを信じているから...なのだろう。