がしっ...
「...て、おいて、かない、で、よーちゃヒックん、おい、てかない、ヒックで...」
彼は、私の手を掴んだ。
「ねぇ、ヒックおいてかな、いで...よ...ヒック」
彼は、必死に私にしがみつく。
逃がさない、離さない、絶対に...とでも言うかのように
薄水色のカーディガンは、濃い色にぽつり、ぽつりと染まっていく
うつむいて、声を押し殺す。
後ろから痛いほどの視線を感じる。
それはこの子の仲間からの、心配と
彼が過去を乗り越えられることを、祈る気持ち。
...いいよ。手助けする。
彼が過去を乗り越えることを。
...だって、彼は前に進もうとしているから。
私の手を掴んだから。
私の手を取ったから、前に進もうとする彼を
私は手伝う。
「...よーちゃんはあんたのこと、置いていってなんかない」
「...え?」
驚いたように私を見る彼。
彼は、私をその”よーちゃん”と、重ねていた。
「...う、そ。置いてったもん。僕を置いて...
それで、僕、一人ぼっちになっちゃって...ずっと、待ってたのに...
信、じてたのに...」
「...あんたは、1人じゃない。仲間がいる。ほら、後ろにいるよ。
あんたのこと、心配してくれてるやつらが。
彼らなら、君と一緒に”よーちゃん”のこと、待っててくれるんじゃない?
...それに。
”よーちゃん”はあんたを置いてく気なんてなかった。
そう、ならざるをえなかったんだ..
...だから、今は彼女を信じて待ってあげなよ。
彼女が...よーちゃんが、帰ってきたら、あんたの仲間と
...せいいっぱい祝ってやんな」