「さて…と。どうしたものか」
キョロキョロと辺りを見回すと、勉強机が2つ。
さすが、毎年講習会で使っているだけの事はある。
ちゃんと設備が整っていて、色々な参考書が用意してある。
机の隣に目を移すと大きな窓があって、
そこからは、光の筋が差し込んでいた。
窓に近付いて、鍵を外す。
「っしょっと……わぁ!」
スライド式の窓を開放した私は、思わず感嘆の声を上げた。
目の前に広がる一面の海。
太陽の光が反射して、眩いばかりに輝いている。
海から吹く湿っぽい風が舞い込んで来て、髪の毛が優しく舞った。
「すごい…。綺麗だ…」
こんな景色を見るのはどれくらい振りだろう?
少なくとも、私の記憶にはない。
何かを綺麗だと感じる心が、私にもまだ残っていたのか…。
なんて、正直そんな自分に驚いた。
「私…本当に沢山の事を見逃しているんだろうな…」
窓辺に頬杖をついて、その景色をゆったりと眺める。
あの人がいなければ、私は今ここにはいなくて、
きっと今日も、自室に籠って勉強をしていただろう。



