先生。あなたはバカですか?

何が起きているのか自覚した時、心臓がドクッと強く脈を打った。


ゆっくりと私の額から離れていく岩田先生の唇。


サラッと私の前髪をかき分けると、



「ご褒美。」



そう言って岩田先生はふっと微笑んだ。


「……なっ…!」


ドカンッ!と爆発するように、車内が沸き立つ。



「キャー!生田さん羨ましいーっ!!」



「先生あたしもあたしもっ!!!」



黄色い悲鳴の嵐だ。



「ほら。川島も早くデコ出せ。してやる」


「いりません。マジでいりません。」


私の隣では、何事もなかったかのように川島君とやり取りをしている不良教師。



なんかもう…怒りを通り越して…



「生田!良かったなー!!岩田先生の唇はプレミアも…


「良くありません」


「えっ…生


「良くありません」



「え…あ…うん。ごめんなさい…」




…すっごく疲れた。





この後しばらくの間、


“峰山先生を目で殺した女”


という噂が陰で流れていたのは、言うまでもない。