帰りの車の中は、凄く静かだった。


私はその沈黙がいたたまれなくて、参考書を読むのに没頭しているフリをした。


だけど、頭になんか全然入ってくるわけもなく、気付いたら家の前に着いていた。



「着いたぞ」


「ありがとうございます。それと、ラーメンもご馳走様でした」


「また食いたきゃいつでも連れて行ってやるよ」


「もう予備校をサボるのは御免です」


私がそう言うと、先生はカラカラと笑った。


笑い事じゃないのだけど…。


今日の分の勉強を取り戻すのがどれだけ大変だと思ってるのよ。


間違いなく、今日は寝不足コースだわ。



私は車を降りると、車に向かって一度頭を下げてから自分の家に向かう。



「生田 スイ」



その声に一度後ろを振り返ると、先生が運転席のフロントドアの窓を開けて、指でクイッと私を呼んだ。


「?何ですか?」


そう、戻ったのが運のつき。


フロントドアの窓に前屈みになって近付いた途端…



––––––––グイッ!



「んっ…」



首の後ろを掴んで引き寄せられた私の唇は、温かい何かに触れた。


それは直ぐに離れたかと思うと、目の前には先生の意地悪な顔。