彼は、「そ…」とだけ言って少し寂しげに笑う。


その表情に、胸の奥の方がチクリと痛んだけど、こういうのを誤魔化すのは私の得意分野だ。



何も感じてはいないように振舞って、黙々とラーメンを食べ続けた。


少しすると先生も「ちょっと一服。」とだけ言って、店から出て行った。



これでいいんだ。


先生が、なぜだか分からないけど本気で私の事を思ってくれているのだとしたら、尚更中途半端は良くない。


先生と居ると、自分が自分で居られなくなる。


今までに感じた事のない感情を沢山知る。


彼の言う通り、この人なら私の世界なんか容易に壊してしまうのかもしれない。



でも、私はそれを望んではいない。


今はただ、お母さんの言うように勉強をして、お母さんの望む大学に入って、私はお父さんとは違うのだと、安心させてあげてあげたい。


私は、そういう生き方しか出来ないんだ。




その為には余計な感情は不要だし、先生の存在も私には不要だった。