「じゃあいいよ。全部俺が食べるから」
「あっ…!」
しまった…。
思わず声を出してしまった…。
相変わらず腹の虫が鳴きっぱなしの私に、彼は意地悪な顔を向けてくる。
「腹減ってるんだろ?食いたいよな?」
「…ぐっ」
「じゃあ、あーんして」
ム…ムカつく!
ムカつくけど、腹の虫が収まらないのも事実で…。
よく考えてみたら、昼間勉強に熱中し過ぎて昼食を食べ損ねていた事に気付く。
こんな美味しそうな匂いに包まれる中で、この人が美味しそうに頬張るのを隣で見ているだけなんて、とんだ拷問だ。
あぁ。
食べられないと思うと、余計に食べたくなるのが人間の性ってものなのか、
そんな事を思っていたら、自覚していなかった空腹感がどんどん私を支配していく。
耳元で、天使と悪魔の囁きが聞こえてくる。
『いいじゃん翠!食べちゃえば!恥ずかしいのなんて一瞬よ!あーんてするだけでしょ!あーんて!』
と悪魔。
『ダメよ翠!ここであーんなんてあなたらしくないわ!それに、予備校をサボっておいてラーメンなんて!気が引けないの!?あなたのライバル達は、今頃勉強をしているのよ!?』
と天使。



