仕方なくついて行くと、先生は思いもよらぬ所で足を止めた。
「なんですか…ここ。」
「ラーメン屋。」
そういう事を聞いているのではない。
私はなぜ、こんな所に連れて来られたのかと聞いているのだ。
目の前のラーメン屋は酷く年季の入った看板を掲げ、胃袋を刺激するなんとも言えない香ばしい香りを放っている。
「あー腹減った。行くぞ」
「え!?入るんですか!?」
「当たり前だろ?安心しろ。奢ってやるから」
「ちょっ…」
そういう問題じゃなくて!
先生は、やっぱり人の話を聞かない。
躊躇する私など気にも止めず、スタスタと店内に入って行ってしまった。
*
「お待たせしました!」
威勢のいいおじさんが、自信たっぷりな表情でカウンターからそれを差し出した。
その差し出しされた物の姿に、思わず唾を飲み込む。
「なんだよ。食わねーの?のびちまうぞ」
「よ…予備校をさぼった挙句、のうのうとラーメンなんか食べられるわけないじゃないですか!」
「ふーん。そう?じゃあいいよ。俺が食うから」
私の前から連れ拐われるラーメン。



