先生。あなたはバカですか?


仕方なくついて行くと、先生は思いもよらぬ所で足を止めた。


「なんですか…ここ。」


「ラーメン屋。」



そういう事を聞いているのではない。


私はなぜ、こんな所に連れて来られたのかと聞いているのだ。



目の前のラーメン屋は酷く年季の入った看板を掲げ、胃袋を刺激するなんとも言えない香ばしい香りを放っている。


「あー腹減った。行くぞ」


「え!?入るんですか!?」


「当たり前だろ?安心しろ。奢ってやるから」


「ちょっ…」



そういう問題じゃなくて!



先生は、やっぱり人の話を聞かない。


躊躇する私など気にも止めず、スタスタと店内に入って行ってしまった。





「お待たせしました!」


威勢のいいおじさんが、自信たっぷりな表情でカウンターからそれを差し出した。



その差し出しされた物の姿に、思わず唾を飲み込む。


「なんだよ。食わねーの?のびちまうぞ」


「よ…予備校をさぼった挙句、のうのうとラーメンなんか食べられるわけないじゃないですか!」


「ふーん。そう?じゃあいいよ。俺が食うから」


私の前から連れ拐われるラーメン。