「……はいっ!」


学年主任の先生に促されるまま、私はスラリと立ち上がり、高鳴る鼓動を連れて壇上へと続く階段を一歩一歩踏みしめる。


壇上へ上がり、演台を前に立つと私の緊張は最高潮に達し、吐く息が震えた。


大きく深呼吸をして顔を上げれば視界が開け、そこへ現れた未来への可能性で満ち溢れた生徒達の顔を一人一人見渡す。



この子達もきっと、あの時の私のように迷い、立ち止まり、涙を流し、沢山の事にぶつかっていくんだろう。


だけど、伝えたい。


そんな未来の先にはきっと、誰もが想像しえないような奇跡が待っている。


だから、見落とさないで。


沢山の小さな奇跡のカケラ。



あなた達の道の脇に咲く、


大きな可能性を秘めた、小さな奇跡の花を–––––。






––––先生。ちゃんと見てくれていますか?


私は今、夢を叶えました。




大きく息を吸い込み、一歩前に踏み出すと、


胸元のネックレスが小さく揺れて、春の木漏れ日のような優しい光を反射した。




「初めまして。今日からみなさんの学校の教師として働かせていただく、


岩田翠です–––––」














【先生。あなたはバカですか?】〜Fin