それでも、あの人の場合まかり通してしまうのだから…。


真面目に生きているこっちがバカらしくなってくる。



すると、私の視線に気付いた先生が、口元に笑みを浮かべたまま、自分の鎖骨あたりを指差した。



……なに?首?



先生の唇がゆっくりと形を変えていく。



–––––“に・あ・っ・て・る“



似合ってる?



あ!!


胸元にあるネックレスに触れる。


もうずっと昔から、まるでそこにあるのが当たり前かのように、私の事を守ってくれた。


あなたがくれた優しい贈り物。




“色んな事をして。色んな事にぶつかって。
辛い事とか悲しい事とか、人生バカみたいにあるけど、きっとお前ならそれを乗り越えられる。”


あの日の先生の言葉が、蘇ってくる。


“それで、乗り越えた先のお前は、気が付いたらこのネックレスが似合うようないい女になってる。俺にはそんなお前が見える”



……ねぇ、先生?


私、先生が言うような、そんな女性になれましたか?



「先生。校長先生のお話が終わりました。先生から壇上に上がって自己紹介をしていただきますからね」


校長先生の話はいつの間にか終わり、「新しい先生方、こちらに」と言う校長先生の優しい笑顔が、新任教師の私達が座る方へと向けられた。