先生。あなたはバカですか？

「太刀打ち出来るわけねーだろ。お前がこの3年、あいつに守られてきた事実は変えられない。俺と過ごした時間よりずっと長いんだぞ？｣


そう言って先生は、瞳に影を落とした。


そんな簡単に…諦めてしまえるの？


そんなの、先生に忘れられてしまうよりもずっと辛い。



「だから、忘れてるふりして、今日お前を見送るつもりだった」



「……先生は、このまま私と会えなくなってもよかったという事ですか…？」


「……あぁ」



………先生の意気地無し。


じゃあ、何で……



「じゃあ、何で図書室であんな事したんですか！？」



さっきまで眩しいくらいだった夕日はほとんど沈み、深い藍色が準備室内の薄い赤を飲み込んでいく。


それと一緒に先生までもが消えていってしまいそうで、凄く怖くなった。



「ネックレス」


「え？」


「お前が…俺がやったネックレスしてたから……」



“自分をおさえられなかった…”そう言う先生の頬を、一筋の涙が伝う。






先生は優しいから。



いつも自分の幸せの事より、私の幸せばかりを考える。



きっとこれからも、そうしていくつもりだったんだろう。



でも、先生は知らないでしょ？



先生が私の幸せを願うように、私も先生の幸せを誰よりも願ってる。