先生。あなたはバカですか?


なっ…い、今の…聞かれた!?


というか今私、何を言った!?!?



私の動揺をよそに、彼は大きく伸びをしながら大あくびをしている。


「俺いつの間に落ちてた?うわっ。もう6時半過ぎてんじゃねぇか」


そりゃあなた…。


必死に勉強している人の横で、かれこれ一時間近く眠っていましたからね…。


そりゃあもう、気持ち良さそうにね。



先生は腕時計を確認しながら顔をしかめている。



でも、まぁ、取り敢えず良かった…。


…どうやら聞かれてはいなかったみたいだし…。



私は、手元のノートに向かって、ホッと胸を撫で下ろす。


「お前、いつまで残るつもりだ?外暗くなって来てんぞ」


「ご心配なく。私はこれから予備校があるので、後10分ほどしたらここを出るつもりです。
私の事は気にせず、先生こそいい加減帰ったらどうですか?」


努めて平然な態度で、先生の顔も見ずにそう言うと、私の視線の先のノートに邪魔をするように先生の手が乗せられる。


明らさまに眉をしかめて先生を見やると、


「予備校何時から?」


なんてことない顔でそんな事を聞いてくる。


「?…7時半からですが…」