–––“俺はもうすぐ死ぬかもしれないんだ”



自分でそう言っておきながら、この強くなる雨音に全て掻き消されてしまえばいい…。


そう思った。



お前がこれ以上、涙を流すくらいなら–––––。










『脳に腫瘍がみられます』


その言葉が全ての始まりだった。



『…どういう事ですか?』


俺のその問いかけに、医者は俺じゃなく手元のカルテを見ながら淡々と言葉を続けていく。


『岩田さんの脳を検査した所、かなり大きな腫瘍が発見されました。恐らく、岩田さんが仰っていた症状もこの腫瘍のせいとみて間違いないでしょう』


俺は、2ヶ月ほど前から頻繁に起こる突発的な頭痛に悩まされていた。


最初は疲れがたまっているせいで起こる、偏頭痛の一種か何かだと思ってた。


だから、病院にすら行こうとは思わなかった。


だけどここの所、明らかに頭痛の頻度が増し、立っていられないくらいの痛みを伴うことがあって、その前の日もそんな症状に襲われた俺は、さすがにおかしいと思って医者を受診する事にした。


その結果がこれだ。


腫瘍って要は、ドラマとかでよく観る…あれか?


『このまま放っておけば、腫瘍は成長を続けるだけではなく転移する可能性があります。すぐにでも手術をおすすめします』


『ですが…』と言葉を切った医者はようやく俺の顔を見た。