お母さんが嫌だと言うのなら、私だってそうはなりたくない。
だから、必死に勉強をして進学校にも入ったし、今だってこうやってお母さんの望む大学に入りたいと躍起になっている。
お母さんを困らせたくないから…。
また、昔みたいにお母さんの笑った顔がみたいから…––––––
「だからぁ、がんちゃんのLINE教えてよぉ〜」
……ちっ。
「F組の子には教えたって聞いたよぉ〜?」
………はぁ。
「やだよ。お前らに教えると四六時中スマホ鳴ってそうだし」
え〜!!という女生徒の悲痛な悲鳴。
また……この男か………。
只今、放課後。
場所は図書室。
一際煩い人集りに目を向けると、資料か何かを本棚に戻しながら女子に囲まれているその男。
俺様不良教師こと、岩田 翔太。
通称がんちゃん(らしい)。
「え〜じゃあ、がんちゃん二人っきりで勉強教えてよ〜!」
「え〜!エリずるーい!!がんちゃんあたしも〜!!」
はぁ…。
女ってものは……何でこうも耳障りな声を出すのだろう?
というか、ここをどこだと思っているの?
図書室が静かにする場所だと知らないの?



