『え!?翠ちゃん今どこ!?』
「…ハァハァ…今、駅。花織ちゃん、先生の居場所を教えて」
私が、そういうと電話越しにガサガサと雑音がして、『生田か?』と言って電話口に出たのは、峰山先生だ。
『生田。16時半までに翔太の家に行くんだ。その時間に翔太はあのマンションを引き払う事になってる』
……引き払う?
ドクンっと音を立てる心臓。
先生と過ごしたあの部屋がなくなってしまう…。
先生との幸せな時間を思い出し、痛みを伴う胸の辺りを無意識に握りしめていた。
色んなことが繋がっていく。
そうか…。
だから、先生の部屋はあんなにも殺風景だったんだ。
いつから?
いつから先生はいなくなる準備をしていたんだろう?
『生田?大丈夫か?』
電話の向こう側からかかる声に、はっと我に返る。
「…大丈夫です」
ううん。
今はそんな事を考えている場合じゃない。
腕時計を確認すれば、時刻は16時になろうとしていた。
駅から先生の家の最寄りの駅まで20分。
そこから先生の家までは走っても10分はかかる。
……ギリギリだ。
だけど、これを逃したら先生に会えなくなってしまう……。



