先生。あなたはバカですか?

岩田先生が学校を辞めたという事実は、どうやら一部の生徒しか知らないらしい。

先生の受け持っている生徒達は特進クラスではないにしろ、受験をする生徒もいる。


そんな生徒達が岩田先生が辞めたことを
聞いて、変に混乱してしまうのを避けるためだろう。


だから今は、先生は諸事情で休暇をとっている事になっている。


彼のその穴は臨時教師が埋めてくれているらしく、そういえば始業式で紹介があったな…なんて、今になって思い出す。


それなのに川島君が知っているということは、恐らく花織ちゃんからの情報なのだろう。


私が曖昧に頷くと、「そっか」と言って川島君はまた空を見上げた。


「それみたことか」


「え?」


「そう…思ってるでしょ?」


そりゃそうよね。


自分でも、本当どうしようもないなって思うもの。



川島君に、先生との恋愛は幸せになれないと釘を刺されていたのに…。


それを無視して突っ走った結果がこのざまだ。


自分のバカさに苦笑が漏れてくる。



「思ってないよ」



ふわりと川島君の髪が揺れて、私に視線を合わせるように腰を屈めた彼と視線が交差する。


「なんて顔してんだって、思っただけ」


川島君の手が私の頬に優しく触れて、キュッとそれをつまんだ。


「痛いよ。川島君…」


「後悔してるの?生田さん」


「…え?」