先生。あなたはバカですか?

『…もう、岩田先生が私と一緒にいるつもりがないのはよく分かりましたから…。私から
、会いにいくつもりはありません』


『…っ!翠ちゃんっ!あのね!岩田先生はねっ…』


『香織』


峰山先生は香織ちゃんの言葉を制止すると、私の前へとゆっくりと歩み出て来る。


そして、地面へと俯けていた私の顔を覗き込み。


『生田は、本当にそれでいいのか?』


そう問いかけてきた。


『生田にとっての翔太は、そんなに簡単に諦めてしまえるくらいの存在?』


峰山先生の真っ直ぐな視線に、私の空っぽになった心が揺れる。


そん…なの…。


『……っだって…あの人は私に嘘をついた!!』


同時に怒りのような真っ黒な感情が、私を支配して。


『側にいるって言ったのにっ!勝手にいなくなった!!』


爪が食い込むほど握り締めた手のひらに血が滲む。


『どうせ、全部…全部全部嘘だったんだ!!』


私の側にいると言ったのも。


私を好きだと言ってくれたのも。


私を愛おしむように紡がれた、先生の言葉全部が……。



『生田聞いて』



峰山先生の手が、私の頭にそっと触れる。


『頼むから、生田に注いだあいつの全部を、疑わないでやって』