世界はこんなにも広いんだって。
世界はこんなにも優しいんだって。
世界はこんなにも温かいんだって。
そう教えてくれたのは、全部全部先生だった。
ねぇ先生?
あなたはちっぽけだった私の世界を壊して、こうして新しい世界を創造してくれた。
こんな私の側にいてくれると言ってくれた。
それなのに……何で……–––––。
「……–––ん……翠ちゃん!」
私の名前を呼ぶその声に気付き、参考書へと向かっていた顔をゆっくりと上げる。
「…花織ちゃん。どうしたの?」
心配そうな表情で私を見ている花織ちゃんに私は首を傾げてみせる。
「帰りのホームルーム終わったよ?翠ちゃん…大丈夫…?」
帰りのホームルーム?
あぁ。そうか。
ここは学校だった。
気付けば教室には花織ちゃんと2人きり。
クラスメイト達は皆、帰宅してしまったらしい。
「大丈夫。ちょっと参考書に夢中になっていただけだから」
机の横にかかったスクールカバンを取り、参考書をカバンの中へとしまう。
黙々と帰り支度を始めた私を、花織ちゃんは何か言いたげに眉を寄せ見守っている。
私はそれに気付かないフリする。
だって、花織ちゃんが言いたい事は分かっているから……。
「それじゃあ、また明日」
「……っ待って!翠ちゃん!!」