先生。あなたはバカですか?

「今日は私が夕食作ったんだ。クリスマスは今年もお母さんは仕事でしょ?たまには前祝いでもやろうよ」


私がそう言った時のお母さんの何とも言えない渋い顔。


思い出しただけでも笑ってしまいそう。


きっと、「勉強は!?」って思ったと思うし、言いたくなったのだろうけど、この前の事を思い出し必死に飲み込んでくれたんだろう。


お母さんは小さな溜息をついただけで何も言わず、静かにダイニングテーブルの椅子へと腰掛けた。



そんなぎこちない空気の私達だけど、それでも私は自然と口元が綻んでしまうくらい嬉しかった。


今お母さんは、私の声が届く場所にいる。


勝手する私の行動に言いたい事が山ほどあるにも関わらず、私の気持ちを優先して、こうして何も言わずにいてくれる。


それだけで、胸の奥がポカポカと優しい熱を帯びるんだ。



テレビから流れてくるクリスマスソングも、わざとらしい女子アナウンサーのテンションも、今年はなぜか煩わしいとは感じなかった。


もう、あの日のクリスマスのようにお父さんはいない。


もう二度とあの日には戻れない。


だけど––––



「……案外美味しく出来たかな」


「え?」


「カレー」


「あ…あぁ。ジャガイモが入っていないけれど、まぁ……美味しいわよ」



あの記憶を鬱陶しいだなんて、思う事はもうないのだろう。




これから先、ずっと–––。