先生。あなたはバカですか?


そんなお母さんに、先生は淡々と言葉を紡いでいく。


「何でもっと頑張らない?よくそんな事が言えたもんだな。元旦那の陰にとらわれ前に進めなくなって、頑張る事を娘に託してんのはあんただろ。こいつは、あんたの苦しみの身代わりをする人形じゃねぇ。こいつには意思がある。あんたの思い通りにならなくて当然なんだ」


私の頬を一筋の涙が伝う。


先生……先生……。


「こいつを……。翠さん自身を、一人の人間として、もっとよく見てはもらえませんか」


「私はっ……」


「翠さんは、自分の幸せよりあなたの幸せばかりを考えている、とても強くて優しい子です。あなたの事を誰よりも思っていて、誰よりも欲しています。


だからどうか、彼女の話を聞いてあげて下さい」


「……っ」



ねぇ、先生?


こんな時だっていうのに思い出すんです。


前に先生が言っていた言葉。


一人道から逸れる勇気のなかった私に先生は言ってくれた。


“俺がいる”って。


“俺がどんな道でも付き合ってやるっつの。
お前が一人で歩けるその時までな“


そう言ってくれた先生の言葉。



あの時はもしかしたら、まだどこか半信半疑だったのかもしれない。