先生。あなたはバカですか?


え?何?


私、何か変な事を言ったかしら?


「……するんじゃなかった……」


「はぁ…」というため息を吐いて、私の肩に項垂れる先生。


「勝手にしておいて、何たる言い草ですか」


「……もうお前、早く行け。このままだと本気で帰したくなくなる」


私から体を離すと、先生はしっしっと手で払ってくる。


相変わらず……失礼な男だ。


行こうとしている私を引き止めたのは、自分じゃないか。


この火照った体と、うるさい心臓を一体どうしてくれるのよ。


「さようならっ」


先生に向けて、べぇっと舌を出してから私は車を降りる。


先生の車に背を向けて歩き出すと、「翠」と呼ばれ、拗ねた顔のまま振り返った。


「何ですか?」


そこには、開いた車の窓枠に肘をつき、微笑みながら真っ直ぐに私を見つめる先生の姿。


「好きだよ」


「……っ」


本当にこの男は、とことんズルイ。


その甘さに、私がどれだけ溺れそうになってるかなんて知らないでしょう?


正直今まで、好きだと言い合うカップルなんてバカにしてきた。


想いを伝え合う行為事態に抵抗があったし。



だけど、今なら少し分かるかもしれない。


伝えたいから言うんじゃない。