「お前さ、最近ずいぶん余裕があるみたいだけど、受験勉強の方調子いいのか?」
器にとったお鍋の具を口に運びながら、先生はそんな事を聞いてくる。
熱かったのか、はふはふと口を動かす先生の仕草がちょっと可愛らしい。
「まぁ。私、志望校変える事にしましたしね」
「ぶほっ…!」
涙目でゴホゴホとむせ返る先生に「何をやってるんですか」とティッシュを差し出せば、それを受け取りながら先生は、キッと私を睨みつけてくる。
「…お前なぁ。それ俺、初耳なんだけど」
「あれ?…そうでしたか?」
そうか。
私、まだ彼に話していなかったんだっけ。
お母さんをどう説得するかばかり考えていたせいで、先生にはすっかり伝えた気になっていた。
担任の峰山先生には、お母さんを説得してから話そうと思っていたし、よく考えたら私が教育学部に行きたいのだと知っているのは川島くんとお母さんくらい。
こんな事言ったら、また先生が不機嫌になりそうだからやめておく。
「そうでしたか?じゃねーよ。勉強見てやってる俺が何で知らねーんだ」
「すみません。まだ親とも交渉中なので」
「…お前の母ちゃんは、反対してんのか?」
私は、肩を竦めて苦笑してみせる。



