先生。あなたはバカですか?


先生は、深呼吸をするようにため息をつくと額に腕を乗せ、遠い昔を思い出すように天井を見つめた。


「俺の親さ、両親とも教師なんだよ」


「両親とも?」


「そう。だから俺は、小さい頃から必然的に教師になるように育てられてきた。この歳になるまで、興味を持った事とかやってみたい事とかいくつかはあったけど、親は“そんな事、教師になる人間がやる事じゃない”って道を逸れる事を許してくれなくてな。別に教師になんてなりたくなかったけど、言われるがままやっていれば文句は言われないんだからって、表面上いい子ちゃんしてたよ」


先生は、何かを嫌悪するように苦笑する。


「大学へ行く為に親元離れてそれなりに遊んだりはしたけど、根底にはいつも親に敷かれたレールの上を歩いてる感覚があって、いつだって息苦しさを感じてた」


……“似ている”と思った。


私に自由を教えてくれた先生の過去が、今までの私と同じ……?


だから先生は、教師なんて辞めたっていいって、そう言ったんだ。


“教師”という道は、先生が選びたくて選んだ道ではないから……。