「なぁ、お前さ。もし明日死ぬとしたらどうする?」
「…そんな事…想像出来ません…」
「出来ないんじゃなくて、するんだよ。
ちょっと目、瞑ってみ?」
「…え」
私が躊躇していると、先生は「いいからほら」と言って、視界を塞ぐように私の目を自分の手で覆った。
真っ暗になった視界の中、瞼に感じる彼の手の温もりと静かに響く彼の息遣いだけを感じる。
「俺の声だけ聞いて、他の事考えるなよ?」
返事はしないけど抵抗もしない私を見て、先生は少しずつ言葉を紡いでいく。
「生田 スイ…。お前は今日の下校中、突然激しい胸の痛みに襲われる。
そのまま意識を失い、気付いた時にはとある病院のベッドの上」
先生の声は、驚くほど低く柔らかくて、
私は、その声に吸い込まれるように先生の話の中の世界に落ちて行った。
「腕には点滴へと繋がれたチューブ。薬品のような臭い。反対側に目を向ければ、そこには白衣を着た50代くらいの医者の姿」
“なんで…私はここにいるんだろう?”そんな事を思うだろう。



