「岩田先生なんかやめて、俺にしなよ」
何を言ってるの?川島君?
「あの人は教師だ。あの人と付き合ってたって、生田さん幸せになれないよ」
何でそんな事を言うの?
私の幸せを決めるのは……私なのに。
「私……」「ふざけんな」
はっと我に返って、慌てて声のした方を見れば……。
「岩田先生……」
教室の入り口に、腕を組みドアの淵に背中を預けた先生が立っていた。
いつからそこに……?
今の話、聞いていたの……?
先生は、何を考えてるのか分からない表情でこちらにつかつかと歩いてくる。
私達のすぐそばまで来ると、川島君の肩をグイッと引いて私から引き剥がした。
「悪いけど、こいつはまだ譲れない」
「……まだ?」
冷静にそう聞き返す川島君に、先生は一度眉をひそめると、私の腕を掴み、進路指導室から連れ去った。
私の手を引く先生の背中は、廊下の窓の外から差し込む夕日にオレンジ色に染められていて、
どうしてだろう?何だか酷く寂しそうに見える。
今にも消えてしまいそうで、いなくなってしまいそうで、私の胸を訳も分からない不安が駆り立てる。
その不安を払拭するように、私は先生の背中に向かって言葉をぶつけた。



