「お、お言葉ですけど…私は受験生ですっ。勉強をして、何が悪いんですか?」
予想を裏切る彼のその言動に、込み上げてくる苛立ちで声が震えてしまう。
心なしか、口角も引きつって上手く話せない。
これは…重症だ。
未だかつて、こんな症状に陥った事なんてないのに…。
「別に、勉強する事が悪いなんて言ってねぇよ。でも、お前は勉強“しか”してないだろ」
「…それの…何が悪いんですか?」
先生は、急に真剣な顔つきになって私を真っ直ぐ見詰めてくる。
こんな真面目な顔も出来るんじゃない。
そう思うほど、見た事のない彼のそんな表情に、胸の辺りがざわついた。
「お前さ。“明日死ぬかも”って考えた事あるか?」
突然投げられたその問いに、私は目を瞬(しばた)かせながら彼を見た。
だって、そんな突拍子もない。
人生このかた、“死ぬかも”なんて考えた事一度だってないわ。
そんな私の様子に気が付いたのか、彼は
「あるわけないよな」
と言いながらふっと小さく笑った。



