先生。あなたはバカですか?


私は、反射的にそれを受け取る。


「ありがとう。川島君も調べ物?」


「いや。生田さんが資料室に入って行くのが見えたから。生田さん、志望校変えるの?」


「え?」


「生田さん、かの有名なK大志望って学年でも有名だから。その資料、教育学部の強いY大のものでしょ?」


川島君は、私の手の中にある資料を指差しながらコテンと首を傾げてみせる。


しまった。


まだ誰にも気付かれず、こっそりと調べるつもりだったのに……。



今まで何の疑いもなく、お母さんに言われた通り偏差値最高峰のK大を目指してきた。


K大なんて、進学校であるうちの高校でも目指す者が少ない難関大学だ。


目指していたとしても、現役で合格を狙う者はなかなかいない。


だからこそ、私みたいな人間はいい意味でも悪い意味でも注目されてしまうのだが、志望校を変更しようものなら、こんなもの不便でしかない。


出来る事なら志望校はそのままで学部だけ変更出来たらいいのだが、何分K大に教育学部は存在しない。


そう。


私は、教育学部への進学を考えていた。


“教師”という仕事に、人にものを教えるという仕事に興味を持ち始めていたからだ。