こうやってこの人に勉強を見てもらう内に、いつの間にか、私の数学への苦手意識はなくなっていてたんだ。
「少し……見直しました」
「それはよかった」
ふっと空気の漏れるような音が聞こえてきて、先生が笑っているのが分かった。
だけど、手元に目を落とす先生の顔はどこか悲しそう。
「でも、お前の言う通りだよ」
「え?」
「俺はずっと、いつ教師を辞めたっていいと思ってた」
「それって……?」
そう問いかけても、先生は一瞬ふっと目を細めて笑うだけ。
結局それ以上は、何も話さなかった。
*
あれはどういう意味だったんだろう?
先生はやっぱりこの仕事が嫌いということなのだろうか?
まぁ、あれだけの不良教師だ。
そうだったとしても不思議ではない。
本当に教師という仕事に誇りがあるなら、もっと執着するはずだもの。
いつ辞めてもいいだなんて、そんな事思うはずがない。
何だろう?
何だか私がもやもやする。
何だかとても悲しい気分。
「あの……。生田さん」
授業と授業の間の中休み。



