それから私に顔を向けた花織ちゃんは、唇を噛み締め、今にも泣き出しそうな顔をしていた。


「翠ちゃんの贅沢者〜〜〜」


「えぇ!?」


「私と峰山先生の進展速度なんて……うわぁぁぁぁ〜〜〜」


「えぇぇ〜!?」


花織ちゃんはとうとう泣き出す始末。


峰山先生の真面目な性格上、この先生と生徒という関係に、花織ちゃんは相当の我慢を強いられているらしく、ボロボロと涙を流しながら愚痴を吐き出す花織ちゃんを私は一人、オロオロと頭を撫でたり背中をさすったり。


途中しゃくり上げながら花織ちゃんは。


「仕方がないのはわかってるの。でも、わ、私は、先生のたくちゃんを好きになったわけじゃないんだもん……。たくちゃんだから好きなんだもん」


そう言っていた。


たくちゃん……。


一瞬誰の事かと思い固まったが、話の流れ的にどう考えても峰山先生の事だろう。


「たくちゃんが先生だったから出逢えたのは分かってる……。だけど、もっと違う形で出逢ってたらって……。もっと普通に恋が出来て、デートしたり出来て、もっともっと一緒にいられるのにって……」


花織ちゃんは、「自分がこの恋を選んだのにね」と苦笑する。