「先生、私がいつも一人でご飯を食べてるのを知って、家に来いって言ってくれたんですよね?」
先生は、一度目を見開くと、「バレたか」と言って、目を上に上げる。
やっぱりそうか。
花織ちゃんか峰山先生かどちらに聞いたかは分からないけど、知っていたんだ。
そっか……。
先生はそれを聞いて、どう思ったんだろう?
なんだか少し、不安になった。
「私の事は気にしないでいいですよ。はたからどう見えるかは知りませんが、私にとってこれはずっと前から当たり前の事なんです。苦痛に思ったりとかしているわけじゃないので、先生がこんな事までしてくれる事はありません」
私は早口でそう言うと、また参考書に視線を戻した。
そう。
私にとってはごくごく当たり前の事。
お母さんが私の為に働いてくれているのは分かっているし、お母さんを責める事も、自分を悲観する事も、何一つないって自分でよく理解している。
じゃあ、何がこんなに怖いんだろう?
先生が、こんな私をどう思っているか?
先生に“可哀想”だなんて思われるのは、ちょっと……キツイかもしれない。



