先生。あなたはバカですか?






スクールカバンを持ってきたのは大正解だった。


先生がキッチンであれやこれやと動いている間、リビングのソファーに座り、背筋をピーンと張ったままの緊張状態でいた私は、


「テレビもつけないで暇じゃねーの?勉強でもしてれば?どうせお前の事だから問題集くらい持ち歩いてんだろ?」


そうキッチンからかけられた先生の言葉でようやくはっとする。


そうだ!


私にはこんな所でぼさっとしている時間なんてないんだったわ!


こんなハプニングごときで、ペースを乱されてちゃいけないっ!


ソファー横に置いてあったスクールカバンの中から、おもむろに問題集と筆箱を取り出し、私はリビングのガラステーブルの上でそれに向かった。




私の神経は、思ったよりずっと図太いんだと思う。


いざ問題集を解き出してしまえば、集中するのは容易なことで、ここがどこだかも忘れて私は無我夢中でそれを解いた。


解き方につまづき、眉間に皺を寄せ考えあぐねていれば、コトンとガラスとガラスがぶつかる微かな音がして、


「この段階でミスってる」


と私の解いた問題の答えをなぞる指と近くで鼓膜をくすぐる声が同時に落ちてくる。