「は、離して下さいっ」


「……だよ」


「え?」


「俺もお前に会いたかったよ」


先生はそう言うと直ぐにバツの悪そうな表情で目を逸らし、自分の腕の中に顔を隠す。


だけど、髪の毛の間から覗いている耳はこれでもかってくらいに真っ赤で……。


…え?


まさかこの人、照れてる!?


あの不良教師が!?


照れているの!?


「う…うそ……」


「嘘じゃねーよ」


毎日毎日、平然とした顔で女の子をたぶらかしているあの不良教師が、絶対に今まで沢山の女子達をはべらかしてきたであろうあの不良教師が、

私に“会いたかった”と言って照れている…。


「……っ」


胸の奥が今までにないくらいギューッと音を立てる。


同時に身体中が熱を帯びて、顔なんかはもう煙が出てきそうだ。


そんな私の様子に気が付いた先生は、身体をむくりと起こして、私の目の前に座り直す。


そしてぶつかる視線と視線。


「平気なわけねーだろ」


早くなる鼓動が、私の知りたかった答えをくれる。


「会いたくて仕方なかった。会えない間、おかしくなりそうだった」


まるで愛しいものでも見るかのように、切なさげな表情で、先生はそっと私の頬に触れる。