「あ…あの…これは……」
口をパクパクさせて狼狽えている私に、岩田先生は首を傾げている。
「あの…えっと……失礼しましたっ!!」
私は、逃げるように彼の横を走り抜ける。
あーもう!
結局逃げてるしっ!
後悔の念も手伝って、チラッと背後を確認すれば……。
––––ズダダダダダダ
ひぃっ!!
追っかけて来てる!?!?
慌てて自分の走るスピードを上げる。
先生の顔、本気だしっ!!怖いしっ!!
な、何なのよぉぉぉ〜〜〜!?
こんなに本気で走ったのはいつ振りだろう?
息が切れて、喉が熱い。
階段を駆け上がる足は震えて、力が入らなくなってくる。
「ちょ…!こ、来ないで下さいってば…!!」
こんな所、誰かに見られたらどうするつもり!?
幸い準備室ばかりの上階には誰もいない様子。
そんな事を頭の片隅で考えながらも、私は必死で先生から逃げた。
その間にも、先生はぐんぐん距離を詰めて来ていて。
「……っはぁ!はぁっ!」
とうとう先生の手が、私に…–––––
–––––グイッ!
「キャッ…」
–––––ガラッ!バタン!
「はぁっ…はぁっ…」
荒い息遣い。
どっちのものか分からない激しい鼓動。
汗に混じって香ってくる、優しい香り。
「……っざけんな。何で逃げんだよっ」



