私だって受験を前に、辺な噂が流れるのは遠慮願いたい。
もう少し慎重に行動してもらいたいものだわ。
「でも、翠ちゃんが造り上げたちっちゃな世界を壊せたのは、そんな岩田先生だからなんじゃない?」
体育座りをした膝の上に両腕を敷いて、そこに頭を預けながらニコッと笑う花織ちゃん。
それを見て「うっ…」と声が漏れそうになる。
花織ちゃんの言う事は図星だからだ。
いつも強引で、こっちの事情なんかお構い無し。
自己中心的で、横暴で、俺様で、口が悪くて。
だけど……
彼はいつも私の本当の部分を見てくれている。
いくら上部を取り繕おうが、直ぐに見透かされてしまう。
そして、逸らそうとする私の頬を両手で包み込んで言うんだ。
“目をそらすな!”
と。
そんな彼だったから、私の世界を壊す事が出来た。
もしも出逢ったのが彼じゃなかったら、今も私は真面目という名の柵に縛られたあの小さな小さな世界で、
お母さんの言う事だけを聞きながら、変わりばえのない毎日をただひたすら機械のように生きていたかもしれない。
そう思ったら胸の奥が急に熱くなって、さっきはあんなに腹が立って仕方なかったあの人に会いたくなってくる。



