「新学期、気を引き締めなさいよ。今が一番大事な時なのは分かってるでしょ?」
「うん」
「気を抜けば、すぐにお父さんの様なダメな人間になるんだからね。あなたはあの人によく似てるけど、中味まで一緒とかごめんだから」
そう言ってお母さんは、靴箱に靴べらをしまうと、強目に靴箱の扉を閉めやった。
そして、私に目もくれず、
「じゃあ、行ってきます」
そう言って家を出て行った。
「……行ってらっしゃい……」
誰もいなくなった玄関に、私の声だけが虚しく響く。
前までは、何でもない事だった。
ただお母さんの言う通り、“お父さんの様にならないように気を付けよう”そう思って終わるだけだった。
私がお父さんのようになれば、お母さんはまた傷付く。
ただでさえ、お母さんは私の顔を見ればその先にお父さんを見ていて、嫌な顔をする。
私だって、これ以上お母さんに嫌われたくはない。
だからこそ、お母さんの言う通りに、
言われるがままに、
必死になっていた。
それが合っているのか、間違っているのかなんか関係なくて、それが私の全てだったから。



