数学科準備室の前に着くと、自然と溜め息が溢れてくる。


また、あの俺様不良教師を相手にしなければいけないのかと思うと、ほとほと憂鬱で仕方ない。


私は、そんな気持ちを払拭するようにもう一度大きな溜め息をつくと、数学科準備室のドアノブに手を掛けた。


ゆっくりと開けたドアの隙間の向こうから、何やら話し声が聞こえてくる。



「…先生も…キス…してください」



「言ったでしょ。生徒にそういう気は起こらないって」



しまった…!そう気付いた時には時すでに遅し。



数学科準備室の中のソファーに座る俺様不良教師。


その上に跨り、彼の胸のボタンを開け、今まさにキスを迫っている……女子生徒!!?



ドアを閉めようにも引っ込みがつかないほど二人と目が合ってしまった私は、ドアノブを握り締めたまま機能停止状態。



女子生徒はそんな私に気付き、「キャー!見られちゃったー!!」と言いながら、赤い顔を両手で覆って逃げるように出て行く始末。



ちょっと待てよ?


ここ、学校よ?


数学科準備室よ?


人が来る事、想定出来たはずよね?